キャスティングゲームに使用するタックルにとって、飛距離は永遠の命題。特にロッドは、ルアーを少しでも遠くへ飛ばすことを第一の目的のひとつに、開発や研究が行われてきたといって過言ではない。
“飛び”の重要性について考えてみよう。まず、50m離れた位置にイカの姿を発見したとする。MAX飛距離が30mのタックルでは物理的にも勝負にならないから、通常は立ち位置を変えて、射程距離圏内まで接近するしかない。しかし、シチュエーションによってはこの行為がイカにプレッシャーを与え、せっかくのチャンスを潰してしまうケースが少なくない。また、30m離れたイカを攻略するのに、MAX30mのぎりぎり届くタックルとMAX50mの余裕あるタックルでは、自ずとキャストアキュラシーに差が出るため、同じ飛距離でも釣れる確率は大きく変わる。つまり、飛距離に優れたタックルは、目標まで届くかどうかという単純な問題以外に、さまざまなメリットが存在することを理解しておいていただきたい。
今回、エメラルダスEXシリーズの1:「インターラインの83MH-HD」、2:「AGS 83MH-T」、さらには3:「AGS 83MH-Tのブランクに特別にチタンガイドを装着したテスト品」の3タイプのエギングロッドを使って飛距離テストを行った。なお、2は1の長さ、硬さ、調子をそのままにガイド化したロッドであり、今回初めてこのような客観的に公平な試験が可能になった。また2と3はまったく同じガイドロッド用ブランクだが、1はインターラインロッドであり、構造が異なることはお断りしておく。
|
【資料2】ティップ振動イメージ(左) チタンとカーボンの剛性比較(右) |
飛距離テストの結果は【資料1】の表の通り。 平均で見ると、AGS搭載モデルがインターラインモデルに2.7m、チタンガイド搭載モデルに3.9mの差をつけた。AGSについては、やはりガイド自体の軽さがもたらすキャスト時の振り抜きスピードの向上、またチタンの約3倍という剛性の高さからくるティップ部の振動復元力の大きさによるブレの少ないライン放出などのメリット【資料2】が影響していることが見てとれる。無論この差をどう捉えるかはユーザー次第。飛距離至上主義なら決定打かもしれないし、インターラインのトラブルレス性能に重きを置くなら、2.7mの差は誤差として目をつぶることができるかもしれない。
|
|
悩ましさがさらに深まるのが次のテスト。 タックルは飛距離テストと同じ。20m離れたプッシュプルゲージにリーダーを接続。ラインをぎりぎり張った状態から水平→垂直にロッドを立てたときのパワーを計測する。これすなわち伝達力。ロッドアクションがどの程度エギに伝わるかの目安になる。数字が大きくなればなるほど、アングラーの思い通りにエギが動いていると判断していい。もちろん、スローテーパーよりファストテーパー、ライトアクションよりヘビーアクションのロッドの方が伝達力は高い。しかし、同じブランクでもガイドの有無や種類によっても変わってくるのだ。
結果は【資料3】の通り、インターライン>AGS>チタンガイドの順で伝達力が高いことが分かった。これはまずロッドの構造に起因する。インターラインロッドはラインを全体、つまり線で支えているのに対し、アウトガイドロッドはいくつかの点(ガイドの数)で支えている。この違いが伝達力の差になるのだが、同じアウトガイドでもAGSとチタンガイドで数値が異なる点に気付く。これはガイドの剛性が影響していると推察できる。チタン製フレームはカーボンフレームと比較すると剛性が低いため、シャクリによって生じた力をショックアブソーバーのように吸収してしまうのだ。逆に言えば、AGSのカーボンフレームは剛性が非常に高く、インターラインロッドほどではないにせよ、アングラーの意思通りにエギを動かせるということ。この伝達力の高さはロッド感度に置き換えることもできるので、微妙な察知する能力にも優れている。
以上の飛距離および伝達力テストによって得られたデータとスペック表のデータを併せて分析し、自分の好みやスタイルに合う理想の1本を見つけ出していただきたい。
|